意気に感じると、人は変わる
肩を組んで…
「俺は、勝ちたい。あいつが病院へ行って、この試合はもう何にもできない。役に立ちたくても立てないんだ。そういう人の気持ちがお前たちにわかるか?あいつの分まで戦って勝ってやろうって思えなけりゃ、仲間じゃない!」
「おおお!!」
ベンチ前、肩を組んでた円陣は散ります。
とにかく一人でもランナーが出ればいいんです。共に中学生。どちらかと言えば、守っている相手の方がプレッシャーは大きいですから、ランナーが出れば何かが起きます。
最終回、先頭バッターが凡退。続くバッターも打たされショートゴロ。
しかし、やはり守っているプレッシャーは大きかった。相手が暴投を投げてしまい、1アウト2塁のチャンスをもらいました。
続くバッターは4番、生徒会長のキャッチャーです。この子は生意気ですが、野球には真剣に取り組んでいました。チームの中では集中力もガッツも一番です。この子が打てなければ、仕方ないって思える存在でした。
相手のチームがタイムを取ります。その隙に、その子を呼んで「任せたよ」と告げると、今まで見せたことのない不安そうな顔をするではありませんか。生意気と言ってもまだまだ中学3年生。ちょっと荷が重かったかな?と思い、もう一度呼んでこう話します。
「俺がおまえを4番にしたのはね、これまでの練習を見ていて、おまえが最も集中して取り組んでいたと思ったからだ。一生懸命練習して、自分を追い込んできたヤツが、ここ一番で結果が出せるんだよ。だから今が、その成果を出すときなんだ。いいか、本当に自分が一生懸命練習してきたと思ってるんなら、その自分のやってきたことも信じろ!」
黙ってうなずくと、のっしのっしとバッターボックスへと向かいます。
その姿には、誰よりも頑張ってきた自信と、絶対に自分がなんとかするんだという覚悟が感じられました。
1アウトだったので、この子がダメでもチャンスはあるかもしれないけれど、みんなでこの子に賭けたんです。彼は、それに応えられるだけの精神力はあったし、そういう心意気を意気に感じるヤツでもあったからです。
そんな奴が燃えないわけがありません。それはもう、抜群の集中力でした。