2017年03月05日 小さな野球部の物語 一覧に戻る
vol.1 始動

中学校の野球部顧問として、中学生を指導した実話です

私は野球が好きなだけであって、中学でも高校でも野球はやっていません。
ここに書きます中学校の部活動の野球部の子どもたちに対し、野球が専門ではない私が、コミュニケーションの専門家としてどのようにかかわり、どのように指導していったのかを日記にして書いていました。もう何年も前の話ですが、その一部をここにご紹介します。子どもたちのやる気を引き出すためにはどのようにかかわったら良いのか、そのヒントになったらいいなと思っています。

 

2008年、4月。この中学校に赴任して2日後、野球部顧問として参加した初練習。しばらく見たのち、集合させます。

「あいさつは、でかい声でせえよ」
「ランニングのときのかけ声もでかい声で揃えろよ」
「集合するときや、何かをするときは、走れ」
「かばんは、きれいに並べて置きなさい」

そんなことを言っては、すぐに行動に移させます。それを毎日続けなさいと言った後、今までやっていた練習を中止させ、グラウンドの端から端までを全力疾走5往復を指示します。

2往復目でバテ始めます。びっくりするほど体力がない。5往復目は、半分の子どもが走れませんでした。それでも、無理矢理立たせては、最後まで走らせます。初日はこれでおしまい。というか、それ以上は、何もできなかったんです。泣き出す子もいて、「こんなに走らされたことない」などと、ブツブツ言ってる子もいました。

私はすぐ、みんなを集めてこう言います。
「こんな体力で、この程度の練習でへばってるようじゃ、夏は勝てん。話にならん。」

翌日、クタクタになりながらも練習に必死についてきました。「一応、野球が上手くなりたいんだな」と思ったので、みんな集めてまた尋ねます。

「4月末に春の大会があるけど、自分たちは、頑張ったら優勝できると思っているか?それとも、叶わない夢だと思っているか?」
ここ数年、市内最下位のチームです。昨年の野球部はほぼ活動できない状態だったらしく、今ではどこの中学校からも練習試合を断られるほど。かなりの負け癖がついてるから「どうかな?」と思いながら子どもたちの返事を待ってみると、「頑張ったらできると思う」という答えでした。

「俺は、他の中学校の実力を知らないよ。けど、おまえらが優勝できるかもって思ってるんなら、優勝するための練習をしよう。今までの練習とは全く違う。優勝するための練習を作るから、必死でついてこい。」

顧問として顔を合わせてからたった2日。公式戦で勝てないこの子たちが、優勝するために何でもする覚悟を決めた瞬間でした。