2017年07月15日 小さな野球部の物語 一覧に戻る
vol.29 先生は、生き方を教える

子どもたちには、正しいことを伝えていくだけ

中学校には、いろんな子がいます。授業に行くと、いつも寝ている子がいます。起こしても起きません。無理矢理起こすと逆ギレしますから、どの先生も放っています。

事情を詳しく知らない私は、力づくで起こします。力づくで起こすので、当然逆ギレして、僕の胸ぐらをつかんできます。全然、素行が悪いわけじゃなく不良じゃないんです。ただ寝てるだけなんです。夜に起きて、本を読んだりしているらしいのですが、昼は毎日のように寝ているそうです。

「俺が寝てるんだから、起こすんじゃねーよ」

訳の分からん理由です。それに対して私は、

「ここは寝るとこじゃない、起きろ」

「そんなこと知らん、誰にも迷惑かけてねーだろ」

「ダメなもんはダメだ」

「俺は俺のことをする。おまえはおまえのことをすればいいだろ」

「だから、俺のやることはおまえを起こすことだ」

…と、問答が続きます。

「おまえ、そんなふうに生きてりゃ、どこも働けねーぞ」

「へー、俺なんか雇ってくれるトコあんのか?」

「そー思うんなら、雇ってもらえるような自分になれよ」

「知るか!」

1時間授業を潰してまで、その子とじっくり話してみました。クラスメイトは、その間、じっと私とその子のやりとりを見ているだけ。
最後には「起きなかったら、腕づくで起こしていい」という約束を取り付けて終了。どの先生が話しても、のらりくらりだったのが、僕にはくってかかってきたらしいのですが、それはそれで大きな進歩です。歯向かうエネルギーがあるってことですからね。

否定的でもそれは、生きるエネルギーになります。くすぶっているエネルギーを発散させてやらなければ、健常にもなっていきません。

家庭でも愛されてない子はたくさんいます。ひとクセもふたクセもあります。こういった子たちを相手するのは、とってもエネルギーを消費するので、毎日毎日できないってのが、現場の先生の本音でしょう。もの凄く疲れるんですよね。

でも僕は、この地道な、喧嘩とも言えるかかわりが、教育にはどうしても必要だと思います。
頑張ろう、先生!