2017年05月15日 小さな野球部の物語 一覧に戻る
vol.16 ツキに見放されても勝つことがある

野球の神様はいるんだ!と思ってしまうような結末

1球目、ストライク。
一球ごとにこちらを見て、サインの確認をしますが、サインは出しません。黙ってうなずくだけ。
1球ボールの後、3球目はストライク。追い込まれます。それでも一切、態度は変えません。状況がどう変わっても、自分の態度は変わらず同じ。それが安心感を創り出します。
態度は同じでしたが、頭の中では現実を考え、延長戦に入ったときの戦い方を考えていました。延長戦って特別ルールですから、どうやって戦うんだっけ?と、先のことを考えて不安いっぱいだったことを覚えています。

そんな中での、ピッチャーが投じた4球目でした。
…バッターが思い切りスイングした先に、ボールが高々と舞い上がっています。相手の外野手が懸命に後ろに走っている姿を見て…

「おおおお!!走れ走れ走れ〜〜〜!!」

ベンチにいる全員で、叫びます。びっくりするほど大きな当たりでした。
ボールはセンターの遥か頭上を越えて、グラウンドを点々…
外野手がボールを取る前には、ランナーはホームイン!サヨナラ勝ちです。

「ぃやったぁ〜〜!」とベンチから飛び出す子どもたち。

僕も彼らと一緒に興奮して、飛び出してガッツポーズ。よく打った!!本当によく打った。あたりまえだけど、狙ってできるもんじゃない。興奮冷めやらないまま、整列し、観戦していた保護者にも挨拶。
「すごいぞ!」「よくやった」の声が飛び、子どもたちはとっても素敵な表情で分かち合っていました。

6−5で1回戦を突破。これほど盛り上がった試合に立ち会ったのも久しぶりでした。
大会本部で他の先生方から「ドラマを作るねぇ」と笑われます。そりゃ、トリプルプレーされて、サヨナラ勝ちなんて、話題多すぎですから。っていうか、あんな大チャンスを逃した試合って、ツキにも見放されて勝てないものなんです。それを勝ちにしたわけですから、子どもたちはよく頑張りましたね。

なにはともあれ、子どもたちの嬉しそうな顔を見て、心からホッとしました。