2017年04月20日 小さな野球部の物語 一覧に戻る
vol.10 物事にはトラブルはつきもの

三重殺

初回は、両チームとも三者凡退。2回表、相手の攻撃、1アウト1、2塁も0点に抑える集中力。
やはり、こちらのペースです。

2回裏のこちらの攻撃。3連続ヒットで、ノーアウト満塁の大チャンスです。
どうしても先制点が欲しい場面で、次のバッターの4球目に、ヒットエンドランのサインを出しました。中学校の軟式野球ではよくある形の点の取り方です。

ピッチャーが投げた瞬間、ランナー全員が走り出します。

そのとき、やってしまいました!

バッターはセカンドライナーを打ってしまったんです。
バッターは、絶対に転がさなければならない場面ですから、ライナーは御法度。当然、ライナーでバッターはアウト。ランナーは全員、走り出しているのですぐには戻れず、三塁、二塁とボールは転送されて、なんとトリプルプレーで3アウトになってしまったのです。

ボーゼン。。。
ノーアウト満塁のチャンスが、これでチェンジになってしまいました。
点を取るチャンスがあったのに、僕が焦ってサインを出してしまった。まだチャンスがあるのだから、まだ動かなくてもよかったかもしれない。まあ結果論ですが。どうしても先制点が欲しいという気持ちがそうさせてしまった。浅はかだったかな。

それでも僕は監督ですから、堂々としていなくてはなりません。「さ、守るぞ守るぞ!自分たちのやることは変えるな!」と叫びますが、ライナーを打った本人は、泣いています。これくらいで泣くのかと思いましたが、この子にとっては大きな責任を感じたのでしょう。守っている間もずっと泣いていました。

トリプルプレーって、稀に起きる珍事です。こんな珍事を起こしてしまい、相手は意気揚々。こちらは意気消沈です。

野球ってのはおもしろいもので、チャンスを潰したあとには、相手にチャンスが来てしまいます。気持ちの切り替えが十分にできないまま、四球とヒットで2点を先制されてしまいました。

子どもたちがベンチに帰ってきて、ここで監督が何を言うかで決まります。トリプルプレーのショック。そして先制点を取られて、さて、これからどうしていくのか。

「なあ、トリプルプレーくらい、くれてやろうじゃないの。2点だろ?1点ずつ返して行こう。幸いまだ序盤なんだ。こちらの野球スタイルは、何があっても変えないぞ。わかったな!」

ライナーを打った子は、またここで泣く。笑)

「もう終わったことだ、切り替えるぞ」そんな仲間の声が、僕の耳にも痛かったことを覚えています。