2017年03月25日 小さな野球部の物語 一覧に戻る
vo.5 試合は、勝つよりも練習の成果を出す

練習試合の相手は、昨年準優勝した中学校。これで、子どもたちにどの程度の力があるのかがわかる練習試合ですが、子どもたちには、この1週間で練習したことができるかどうかだけを見る!と言います。勝ち負けも大事ですが、練習試合というのは、練習したことが、試合で使えるかどうかを試すことが大事です。

声を出し続けること。
全力疾走すること。
一球一球、かまえること。
学んだ走塁方法の通りに走ること。
バントは、練習した形の通りにやること。

この5つができていればいいんです。あとのことは、すべてうまくいかなくてもOKです。三振したっていいし、エラーをしたっていい。当然、練習したことやってみた結果の失敗も、何も言いません。やらないことについては、試合中であれ、怒ります。何事も、実行すること。

顧問が私に変わり、ある意味、心機一転となって初めての試合ですから、なかなかいい雰囲気で始まりましたが、プレイボールと同時に、子どもたちはいきなり慌て、舞い上がってしまいました。

相手チームが、メガホンを持って、メガホンを叩きながら大声で歌を歌うように応援していたんです。その応援にびっくりして、のみ込まれてしまったんですね。メガホンなんて持って応援する中学校と試合をしたことはないらしく、今までみたことのない応援に驚いたんでしょう。完全に萎縮してしまいました。

あたふたしている間に、3点取られてしまいます。次の回になっても修正できません。自分の気持ちをコントロールできないんです。さらに1点を取られて戻ってきた彼らは暗く、互いに苛立ち、ベンチで応援している2年生に八つ当たりを始めます。

「おい、2年、声出せよ!」

それを見て、3年生を集めてこう言います。

「おまえら、誰と試合やっとるんだ?」

「・・・」

「相手の応援に気を取られて、相手の選手を見て試合しとらんじゃないか!2年の応援がなんだ?八つ当たりじゃないか!そんなことに気を取られて、試合のこと考えとらんじゃないか!おまえらの相手は、相手の応援じゃねーだろ!」

しかし、わかっていても、気持ちのコントロールができないのが中学生。こちらも1点を取るものの、さらに点を取られ、キャッチャーをやっているヤツは、ついに気持ちが切れて「おい、ちゃんとやれよ!」と、仲間にまで文句を言うようになりました。

一緒にやっている仲間にまで八つ当たりしては、勝てるはずもなく、完敗の1試合目でした。