2017年03月15日 小さな野球部の物語 一覧に戻る
vol.3 できることをやるだけ それができない

できることをちゃんとできる大人になれ

今まで、やりたいようにやりたい練習をして「俺たちは他の部活より頑張って取り組んでいる方だ」と思い込んでいた3年生。僕から見たら、野球で遊んでいるようにしか見えませんでした。仕事でもこのようなケースってあると思いますね。自分でやりたいように仕事をして、頑張ってると思い込んでいる。しかし、もっと頑張っている人、もっと本気で生きている人はいる。

声を出し続けろ!と言いますが、声が続きません。ノックをしても、自分の順番にならないと声を出さない。野球の練習って、基本的に自分の番以外は、立って待っているだけの時間が多かったりします。でかい声くらい出せるだろうに。声を出し続けることによって、練習にリズムや集中した雰囲気を作ることができます。ましてや試合では、自分には関係のないボールでも、関係があると思ってプレーしなくてはなりません。スポーツって、審判がタイムと言わない限り、気を抜けないものです。

自分の番が終わると気を抜いて、声も出さずボーッとしている子を見つけると、ノックの手を止め「おまえ、声を出してないだろ!なんでだ!?」と聞きます。

「・・・いや」
「やり続けろって言っただろ!」
「はい」
「そーゆーとこ、気を抜いてるんじゃない!他のヤツらもだぞ、声出したり、出さなかったり。そんなカンタンなことくらい、変えずにやり続けられないのか!」
「できます」
「できるんなら、やれー!」

グラウンド中に響き渡る怒鳴り声なので、他の部活の子どもたちが驚いてこっちを見ます。私は、できることをちゃんとやりなさい!ということを教えたいのです。ファインプレーなんかできなくていい。野球がとびきり上手じゃなくてもいい。ホームランが打てなくてもいい。一人ひとりができることをただやれば、試合には勝てることを教えたい。大人になったとき、背伸びしなくても無理をしなくても、自分にできることをちゃんとできるなら必ずいろいろなことはうまくいくんです。

その日から、校内でいろいろな子どもとすれ違うたびに、ヒソヒソと「あれが新しくきた野球部の先生だよ」や「こないだめちゃくちゃに怒ってたよ」「目が合うと何されるかわからん」と聞こえてくるようになってしまいました。

やるときゃ妥協なくやるんです。声を出し続けると決めたら、やり続けなければ、練習はストップです。遊びで部活やってるんじゃない。やるからには勝ちたいって、この子たちは思っているから。